『もしも』が繋ぐ Sunshine Stories
もしも、あのすれ違いさえ無かったら───
もしも、あの時勇気を出せていなかったら───
もしも、願いがちゃんと叶っていたら───
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『もしも』
その先に広がるのは
誰もが歩んでいたかもしれない
もう一つの物話。
いま、自分が歩んでいる人生か。〝もしも〟の先に広がっていたはずの人生か。想像を膨らませて悩むことも、私自身たまにあります。
今日のテーマは、そんな『もしも』から見る世界。
どうぞお付き合いください(* ᵕᴗᵕ )
⚠︎ 以下、ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow をはじめ、シリーズを通した物語のネタバレを含む内容となっております。お読みになる際は予めご了承下さい。
雨上がりの水面に映るのは…?
雨が止んで、晴れた空には虹がかかり
ふと、足元を見渡すと
あちらこちらに水溜まりを見つけます
いちばん大きな水溜まりを選んで
そーっと…水面を覗き込むと
そこに映るのは
──────もう1人の自分
「おーい、そっちの世界は楽しいかー?」
なんて、小さい頃はよく呼びかけたりしたものです。
そこに映る自分は、今ここに立っている自分よりも少し大人びて見えて…そこに映る空も、頭上に広がっている空よりもちょっぴり高いような気がする…。
水面の向こうにいる自分が
自分じゃないように思えて不思議でした。
そのとき私が水面の向こう側に見たのは
〝もう1人の自分〟が生きる世界。
そこにいる自分は、ここにいる自分が選ばなかった方の選択肢を選んで生きていたり、あるいは進むことが出来なかった方の道を歩んでいたり────するのでしょうか。
有り得ない話かもしれないけれど、ひょっとしたらそこには『もしも』の先の世界が広がっているのかもしれませんね。
取り返しがつかないからこそ
幼い頃、二人で見つけた雪の結晶のように、自分たちにしか出せない輝きを放って〝二人で〟頂点に立ちたい────それが、鹿角姉妹のたった一つの夢でした。
「ラブライブは、遊びじゃない!」
その言葉が指し示すように、Saint Snowにとって LoveLive! は、人生そのものをかけた戦いと言っても過言ではないくらい、重要な存在だったのだと思います。
何よりも、彼女の鋭い瞳がそれを物語っていました。
それだけ強い想いをかけて挑んだ大会だったのに……思わず、目を瞑りたくなるほどの悲劇が起こり、二人は頂点に立つどころか、アキバドームに立つことすら許されなくなってしまったのです。
先日公開された劇場版でも、理亞ちゃんの心の内が痛々しいほど鮮明に描かれていました。
一方で、「決勝が終わったら伝えるつもりだった」という姉・聖良から妹・理亞への想いも、その場をもって明らかにされました。
延長戦で披露されたBelieve againは衝撃を受けるほど素晴らしいパフォーマンスで、スクリーンを挟んで観客となった多くの視聴者の目にも、大粒の涙が浮かんだことは言うまでもありません。
劇場を後にする際も「Saint Snowやばい、鳥肌たった」と多くの人が口を揃えて話していたことが印象的でしたが、その中でひとつ、考えさせられる感想を耳にしたことを覚えています。
「もしあの時失敗しないで決勝に進んでたら、Saint Snowが優勝してたんだろうね」
そのぐらい、凄まじいパフォーマンスでした。ただ、もしもあのまま決勝に進んでいたら…と考えた時、私にはそうは思えなくて。
結構な時間、うーん…と頭を悩ませていました。
ということで、突然ですがここで
『もしも』を一つ考えてみたいと思います。
もしも、
あのステージで失敗していなかったら…
Saint Snowが決勝の舞台に立っていたら…
優勝したのは この二人だったのでしょうか。
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Believe againは、決勝で披露されるはずの曲でした。
作詞作曲はもちろんのこと、振り付けや衣装、演出のクオリティも高く、それだけでも優勝を狙えるほどのレベルであったことは間違いないと思います。
しかしながら、そういったことを差し置いて、Lovelive! で勝ち抜くために最も重要なことが他にあると思うのです。
それは、心(=ハート)です。
スクールアイドルは、部活動の中でも特殊なイメージがありますが、根本的な部分では他の部活動と変わらないと私は考えています。
大会やコンクールでは、今まで積み上げてきたものをその場で出し切れるかどうか、つまり、本番のパフォーマンス次第で勝敗が決まりますよね。
どんなに強いチームでも、動揺して本番で思わぬミスをしたり、実力を発揮できなかったりしたら、最悪の結果に陥ることもありますし、逆のことを言えば、名声の低いチームだって、本番次第で実力以上の結果を掴み取ることも不可能ではありません。
このように、心はパフォーマンスに表れ、それ次第で結果は良い方にも悪い方にも転がるのです。
そしてこれらは、Lovelive! においても共通して言えることだと思います。
勝ちたいという気持ちがあって、勝ちたいと思う理由があって、そのぶれない真っ直ぐな心が歌声やパフォーマンスとなって表れ、観客のもとに届く────ましてやその中で優勝するということは、出場グループの中で最も観客の心を震わせるパフォーマンスをするということになります。
では、改めて。。
もしも、あの時失敗をすることなく、Saint Snowが決勝に進むことができていたとしたら…映画の中で披露してくれたような優勝を確信させるくらい究極なパフォーマンスが、彼女たちにはできていたのでしょうか…?
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私は、それは難しかったと思います。
延長戦という名目で、アキバドームではなく函館の地で披露されたBelieve againは、魂を揺さぶられるほど熱く、その心が容赦なく伝わってくる素晴らしいパフォーマンスでした。
けれどもこれは、様々な紆余曲折を経て大きく成長し、大切な事に気付けた彼女たちだったからこそ作ることができたステージだったのではないでしょうか。
歌も、ダンスも、衣装も、フォーメーションも、その全てが評価に繋がる大事なものであることには違いないけれど、やはり一番大切なものは〝心〟なんだと思います。
その心に惹き付けられ、感動し、見ている人の心をも動かす。そんな力が最も大きかったグループに勝利の女神は微笑み、優勝旗を手にすることができる────
あの時の心の揺れが劇場版のストーリーを経てようやく静まり、前に進む決心がついたからこそ、Saint Snowはこれだけのパフォーマンスを届けることができたのだと、私は思いました。
すると、同時にもう一つ疑問が湧いてきます。
優勝はAqoursで変わりなかったのでしょうか。
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皆さんなら、どう思われますか?
私は、こちらもそうとは限らないな…と思いました。
Aqoursもまた、決勝前に心が揺れていたからです。
廃校という避けられない現実を突きつけられ、優勝して学校の名前をそこに刻もうと決心したものの、まだ心には雲がかかっていたように思えます。
……そんな時でした。
「勝ちたいですか?」
この言葉が、優勝への扉を開くための鍵のように思えました。
何のための LoveLive! なのか。どうしてそこまで勝ちにこだわるのか。その理由をきちんと見出し、心から〝優勝したい〟という気持ちを引き出すことのできた千歌ちゃんとAqoursだったからこそ、あれだけのパフォーマンスができたのだと。
だから、全てが繋がっているんだと思います。
大きな失敗も、そこで学んだことも、全然関係のないような小さな出来事だって、ひとつひとつが欠かせない要素となって、この結末に繋がり、今を形作ってくれている。
決して、後悔する必要なんてないのだと。
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やっぱり、ラブライブは人生の教科書です…。
辿ってきた道は…
思えば、沢山の成功と輝きを残してきたAqoursのメンバーも、一人一人が心に葛藤を抱えていました。
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すれ違って、後悔して
相手を想うあまり、言葉が足りなくて
自分自身の在り方に迷って
一度は自分を捨てようとして
自分の気持ちを閉じ込めようとして
惹かれて、でもやっぱり引こうとして
つまづいて、大切なものを失いかけて
自分が上手くやればいいって、抑え込んで
求める輝きは、いつまで経っても遠く感じた
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数々の障壁に阻まれて、一筋縄ではいかないことも沢山ありました。時間もかかりました。
けれど、もしも、こういった心の葛藤や
彼女たちを阻んだ障壁がなかったら────?
その問いには、答えるまでもないでしょう。
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空白の時間を埋めるくらい、精一杯輝いて
あの時叶わなかった願いが叶って
そのままの自分で良いのだと、気付かされて
運命を信じたいと思えて
恐れず、自分から勇気を出せるようになって
心から通じ合える仲間と居場所ができて
この道で良かったと、胸を張って言えて
本音で向き合うこともできるようになって
輝きは、最初から自分の心にあったのだと気付けた
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葛藤や障壁があったからこそ彼女たちは、多くのことを学んで、本当に沢山の経験を積んで、ひとまわりも、ふたまわりも大きくなりました。
それこそ、この道で良かったと。
違う未来なんて考える必要もないくらい
今この時を受け入れることができます。
ただ、一つだけ
そんな風に簡単に言い切ることなど到底できないであろうエピソードが今、頭に浮かびました。
もしも、廃校を阻止できていたら
ここまで色々な『もしも』を巡ってきましたが、この問いに関して、私はすぐに答えを出すことができませんでした。
廃校から逃れられなかったことが、あまりにも厳しく残酷な運命だったからです。
今でも、#11浦の星女学院 や #13私たちの輝き の回想シーンを見ると、どうしようもないくらい胸が締め付けられて涙が止まらなくなります。
そして劇中で、鞠莉ちゃんが「一番叶えたい願いは、叶えられず」そう語っていました。
思わずハッとしました。
何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、廃校阻止は “一番叶えたい願い” だったんですよね。
彼女たちの成長物語、青春物語には、それ以上の輝きがたくさん詰め込まれているせいか、一番の目的を忘れてしまう瞬間があります。
しかし、どんな時も彼女たちの瞳に映っていたのは、彼女たちの大切な母校、浦の星女学院でした。
一番叶えたい願いは、叶えられず
胸が張り裂けそうになるこの言葉を、映画館のスクリーンを前にして聴いた時、涙が溢れだして止まりませんでした。
でも、その時、自分の頬を伝う涙が温かいことに気付いたんです。98人で募集締切になったあの瞬間に流した涙とは、明らかに違うものだと。
たった一言。悲しい言葉なのに、清々しい声でした。まるで「やり切った」とでも言っているかのように届いた鞠莉ちゃんの言葉。この言葉を聞いて、閉校祭の全員合唱を思い出しました。
「やり残したことなどない」
あの時はまだ「そう言いたいね いつの日にか」と歌っていましたよね。
今が、その時なのではないかと思いました。
柔らかい表情で校門を閉める千歌ちゃんと、それを静かに見守るみんな。気持ちは一つです。
だから─────
「もしも廃校を阻止できていたら」
そう考えるのではなく
「なくならない。全部ここ(心)にある」
それに気付くこと。
一番大切なことに気付けたのは、失敗して、悔しがって、悩んで、また上手くいかなくて、何度も何度もそれを繰り返してここまで来た────今だったからなのかもしれません。
あと2人……悔しさや虚しさを抑えきれず、悲しみに明け暮れたあの時とは違って、穏やかで優しい波が胸いっぱいに広がっていくのを感じました。
いまの僕らでよかった
もしもを想定することは、今を受け入れることに繋がる───そう思えてきませんか?
ここまで様々なシーンを『もしも』と共に振り返ってきましたが、最後に、どうしてもこれは外せないと思ったある楽曲について触れておきたいと思います。
パラレル
いまの僕らでよかった
他の選択肢だったら
ここで一緒に笑い合えなかったかも
Marine Border Parasol より
彼女たちは「もしも他の選択肢を選んでいたら…?」と、いわゆるパラレルワールドを想像しました。そしてその上で、パラレルではない「いまの」自分たちで良かったと笑い合います。
もしもを想定して、今を受け入れた
───そういうことではないでしょうか。
そして、個人的にはさらに感動したフレーズがもう一つあります。
「♪~笑い合えなかったかも」の〝かも〟です。
「から」でもなく「だろう」でもなく、やっぱり〝かも〟がぴったりだと思うんですよね。
もしかしたら、他の選択肢を選んでいても最後には笑い合えていたのかもしれないし、そうではなくて、この選択肢だったからこそ一緒に笑い合えているのかもしれない。
真相は、誰にも分からない─────
そうです。
誰にも分からない。分からないからこそ、あくまで想像に過ぎない「もしも」ではなく、確かにここにある『いま』を受け入れることを選んだ。
その肯定こそが、究極の優しさ そして 強さであると、私は思いました。
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『もしも』という言葉が、今を卑屈的に捉えるためではなく、過去を、過程を、そして今を肯定するために、こんなにも大きな力を発揮してくれるなんて… 今まで想像したこともありませんでした。
でも、その言葉の魔法ひとつで、物の考え方や捉え方は如何様にも変えることができ、目の前に広がる景色さえも変わったように感じられるようになる。
世界は何一つ変わっていないのに、不思議です。
あの瞬間・あの出来事があったから今がある。
もしも、違う道を進んでいたら、今の自分も、この先に待っているであろう素晴らしい未来も、なかったかもしれない。
だから──────
この道でよかった。
そう思うことができたら
自分の人生そのものを愛することができる
そんな、人が一生を生きる上で大切なことを、この Love Live! Sunshine!! が気付かせてくれました。
どうして私がこの作品にこんなにも惹かれるのか、その本質が今、少しだけ分かった気がします。
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というわけで… もうすぐ6600字に到達してしまいそうなところまで引っ張ってしまったので、この辺りで締めたいと思います。
相変わらず、長くてまとまりのない文章でごめんなさい。今回も要素盛り込みすぎました、そろそろ成長しないとですね ( ˊᵕˋ ;)
それでもお付き合いくださった皆様
本当に、、 ありがとうございました!!
劇場版公開に寄せて記事を書こう書こうと思ってはいたものの、気が付いたらこんなに時間が経ってしまいました。
サンシャインにしか出せない良さがこれでもか!と詰められた作品だったので、その良さをこういった形で発信して、僅かでも後押しができたらという思いで書いたのですが、伝えることができたでしょうか…?
それでは、最後にひとつ願いを込めて
この記事を締めたいと思います。
LoveLive! Sunshine!! の物語が
一人でも多くの人の心に届いて
いつまでも、愛され続けますように…。
こと葉 🌱